オルミゴンはラネテの息子たちが幸福に生きていれば己の救いになると思っていたけど、それは救済を必要としないグラナドとアンバルにとってはただの罪悪と責任の押し付けで、駄目な方向に加速していった間違った自己犠牲の献身精神を文字通り叩き直したアンバルは、言わば追い詰められたオルミゴンの心を救った訳だ。
このショック療法でオルミゴンが罪悪の雁字搦め状態から脱却できたことはアンバルにとっては死ぬ前に出来た誇らしいことの一つではあるけど、そのことを己の救済にはしない。でも、オルミゴンの心を救ったことで結果的にアンバルが持つ希死念慮を上回る程の生へのよすがを得ることにはなった。切実に熱烈に「愛しているから生きて欲しい」って願い乞われたワガママという形で。
救ったことが救いになったのは実はアンバルの方かもしれないねこれ。