好物:パウンドケーキの話
ゴンちゃんの実家は祖母最強のグランマ統治社会ってジーノとロッコ(従兄弟)の練りの時も散々言ってたんだけど、オルミゴンの好物欄にあるパウンドケーキはそのグランマが作った田舎菓子なんだよね。いわゆる故郷の味で、色々研究はしてるし教わってもいるんだけど未だに同じものが作れてない。
圧縮率どうなってる?ってレベルでドライフルーツやナッツがぎゅうぎゅうに詰め込まれてる昔ながらのパウンドケーキ。従兄弟たちは食べても食べても減らないしもう食べ飽きてるから反応良くなかったけどそういう素朴さがゴンちゃんは好きだという。こいつこういうとこある気がする。
里帰りで女衆に混ざってキッチンに立ってこいつ昔から器用だったけど今じゃ料理人なのねぇっておばちゃん達にもみくちゃにされてるぱっと見輩の強面33歳男性見てぇよ。
閑話休題。以下🐃⚡
ゴンちゃんはアンバルに美味しい物好きな物いっぱい食べさせたい人だけど、逆に自分の好きな物食べさせるネタもあっていいと思うんだよね。グランマの味に追いつく為に気が向いた時に試作してるし、同じではないけど近い物が出来た時に何気なくおやつとして出すとかそういうささやかなものでいいよ。
多分アンバルの感想はまず「減らねぇ」だと思うんだよ本当にやべぇ圧縮率のケーキだし。一切れで腹いっぱいになるレベルだし。食べさせた本人もそうだろって楽しそうに笑ってる。
んでお茶淹れながら故郷の味だってこととか婆さんがその時あるもの何でも詰め込んでギッチギチにする話とか、同年代の親戚は皆飽きてたけど俺だけはなんか好きで俺が来るたび婆さんは張り切って作ってたとか、そういう話を懐かしんだ顔でしてほしい。
そういう話を言葉少なく「そうか」って相槌うつアンバルの目元が存外優しく緩んでるのは、オルミゴンがああ見えて結構秘密主義なのに内側を見せてることとか、今まで自分を矢面に消費させてきただろう人間がきちんと優しく在れる生まれの土壌があったこと、それを知れたことを無意識に柔らかく感じているんだろうなと。おぉ。案外穏やか。
アンバルは生まれも育ちも恵まれた記憶は無いし、唯一の救いであるラネテさんと過ごした日々でさえ強い太陽の日差しに脳が焼かれたような日々だったから、オルミゴンの言う故郷の風景みたいな当たり前で穏やかな優しさは知らない光景なんだけど、目の前の男にそれがあって良かったと思える程度には情を抱いてもいるんだなぁと思うのであった。好物の話からだいぶセンチメンタルに偏ったな。
減らないケーキを咀嚼しながら穏やかに相槌を返してくれるアンバルの、前述の情を感じる仕草を察せない程短い付き合いでもないので、好きな人が自分の好物を共有して、自分の好きな思い出を良かったものとして受け入れてくれる穏やかな時間をちょっと噛み締めるゴンちゃんはいるかもしれない。
なおパウンドケーキは二人で食いきれなかったので小分けにして後々店頭に並ぶ。
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